INTERVIEW
ランスを演じてくださったNurvussさんより頂いたインタビューに回答しました。
こちらに載せているのは和訳です。Nurvussさんのサイトで、原文が読めますのでどうぞ。


うり、The Boogie Manの製作を終えた今、どんな気分?
 やっとリリースできたという喜びでいっぱいですが、これで終わりではないと思っています。バグがあればその対応をしなければならないですから。とりあえず一段落ついたということで安心はしました。


The Boogie Manは初めての二ヶ国語プロジェクト?世界中の声優と一緒に製作するのはどうだった?
製作過程で何か挑戦したことはあった?
 実はThe Sand Manで既にvgpersonさんのご協力を頂いて、英語版のリリースを日本語版と同日に行ったので、初めてではないです。 英語圏の方の声優起用は、私がTwitterでやりたいなあと呟いたのを見てvgpersonさんがご協力を申し出て下さったことから、始まりました。声優募集サイトを探して下さったり、オーディションの募集要項を英訳してくださったり、シナリオや声優さん達への連絡の英訳など、とにかく万事においてご協力頂きました。vgpersonさんがいなければ、The Boogie Manフルボイス化は実現しなかったでしょう。本当に、彼女には心から感謝しています。
 それから、声優の皆さんと一緒に製作できるのはとても楽しかったです。私は英語が下手なので間違えたことを伝えてしまったり、誤解させてしまったりとご迷惑をおかけしました。でも製作過程から第三者の目があったことは、私にとって大きな手助けになりました。
 挑戦と言えば、シナリオを書いたり、ボイスのファイルを加工したりしたことですかね。私は遅筆なので、シナリオを書くのがとにかく遅くて、声優さん達をかなり待たせてしまいました…。あとは、今作で初めてスキップ機能を取り入れたことも大きな挑戦です。


The Boogie Manは恐ろしい殺人を除けば、君の作品の中で最もコメディックな作品かも知れないね。ブギーマンはユーモアのセンスがあるし、ふざけた登場の仕方をしたり、たびたび「第四の壁」を壊すような真似をする。そういったところからすると、このゲームはシリーズの他作品とは乖離しているように思えるね。
このゲームでユーモアをどう使ったか、教えてもらえる?
 この作品はそもそもB級映画のようなイメージで製作していましたが、今になって振り返ると、どちらかと言うと演劇のような感じがしますね。キャラクター達がドタバタするのを、プレイヤーは観客として観るような感じでしょうか。
 キースは、自分を舞台の上にいるピエロのように考え、自分が奔走する姿が傍から見れば滑稽なものだと理解しています。愛する妻が悪人に追われているのに、キースは人質の保護が優先とか、これ以上被害を出せないとか言って、妻をがむしゃらに追いかけることができません。プレイヤーはそんなキースを観て、苛立つでしょうね。それこそ、ランスがキースに対し言った"If you wanna save your woman right now, then do it!!"でしょう。
 キースが最も優先すべきなのは、ブギーマンをやっつけることなんですよ。ヘレナはブギーマンに追われているんですから、ブギーマンを倒してしまえばヘレナに到達できる訳です。でも彼はそのことに気づけずに、後手に回るばかりでした。そこが、この作品のコメディックな部分ではないでしょうか。
 ブギーマンは、そんなキースを嘲笑い、彼を混乱させるために色々ちょっかいを出してきます。彼の特性は、まるで自分が何もかも知っているかのように行動し、人々を恐れさせる点です。物語において「何もかも知っている」立場は、普通は作者にしかありえません。ブギーマンはただの悪役ではなく、作者が用意した舞台装置のようなものですね。だから彼はふざけた行動ばかりするし、パロディ的なことをします。
 この作品は、ヘレナを挟んだキースとブギーマンのいたちごっこがメインになっています。当人たちは大真面目かも知れないけれど、俯瞰しているプレイヤーはくだらないと思うでしょう。だからこそ、悪役のブギーマンはくだらない、ふざけた存在じゃないとダメだったんです。


TBMでお気に入りのキャラは?
 TBMの登場人物は皆、ただの「キャラクター」ではなく、私にとって本当の「人間」でした。何故なら皆、肉声があり、とても感情豊かに、生き生きとしていましたから。ここまで自分の作り出した存在を人間として認識したのは初めてで、とても面白かったです。
 だから誰が好きかと言うのは、非常に言いにくいです(笑) 皆いい奴だと思うし、皆好きなんです。ブギーマン、ブランドンも作っていて楽しいヒール(heel)でした。強いて言うなら、人間像を作り上げるのが難しかった分愛着のある、キースですかね。


ランスが電話で話してるのは誰!?
 彼の勤める出版社でゴシップを担当している同僚です。「うまいことネタを掴めれば...」とランスは言っているので、ランスは後々キースにちょっかいかけて(例えば煽って怒らせて、わざと殴られるとか)、ゴシップのいいネタになりそうなことを起こそうと思ってたんじゃないでしょうか。彼は元々警察嫌いですしね。結局彼は事件の後、同僚に話したりはしてないですが。


君が主に影響を受けたものってなに?(ゲームに限らず、本や映画・絵など、どう惹きつけられたかに関係なく、何でも)
 難しい質問ですね。ただ、やはり作品の物語を思いつくのは音楽を聴いている時なので、音楽の影響が強いんじゃないかと思います。そして実際に作品の中に取り入れているものもあります。例えば、TCMのGood Endのタイトル、Bye Bye Blackbirdはジャズの有名な曲ですし、TSMの元ネタはMetaliccaのEnter Sandmanです。
 TBMはThe JacksonsのBlame it on the Boogieを聴いててなぜか思いつきました(笑) だから、Blame it on the Boogieという言葉が出てきます。製作中はよくBlack Eyed PeasのThe Boogie That Beや、No doubtのTragic Kingdomなんかを聞いてましたね。あと、TBMのバッドエンドの一つ、White RoomはCreamの歌です。
 音楽以外だと映画の影響が大きいかと思います、特に古いホラー・サスペンス映画とか。The Exorcistは1番好きなホラー映画ですし、The Silence of the Lambsの演出方法は大好きです。ヒッチコックのThe Birdsのような不条理な怖さを再現してみたいと思うこともあるけど、無理でしょうね...。


製作過程について教えてもらえる?どうやって物語を作り始めて、どうやってキャラクターを生み出すの?
 こんなシーンを作りたい!という思いつきが、全ての始まりですね。例えばTCMは2周目プレイのデヴィッドとデュークの会話、TSMはソフィーに手紙を書くサンドマン、TBMは息子の墓の前で会話するベアリング夫妻など、本当にただのワンシーンが物語を作り上げるきっかけになります。コーヒー飲みながらのんびりしてる時とかに、「こんなシーンを作りたいなあ」とふと思いつくんです。そして、そのシーンを組み入れるための物語作り、キャラクター作りを始めます。物語を考えるのに苦労したことはないですね。いつも自然と作りたいものが思い浮かびます。
 キャラクターは物語を組み立てていくうちに生まれる感じです。物語の進行と主人公の性格・行動パターンは切っても切れない関係ですし、
主人公を動かし、また時に主人公の鏡となる他者の存在も物語の進行にはとても重要ですからね。TBMで言うなら、ランス、リチャード、デヴィッドはキースの鏡として重要な存在です。自分の意思を明確に持ち、そのままに行動するランス、子供を愛する親であるリチャード、妻を愛し信頼する夫としてのデヴィッドは、キースが抑圧している感情の象徴でもあります。彼らとのやりとりでキースの心は動かされ、物語が進むんです。そんな感じでそれぞれのキャラクターには役割を持たせるように作っています。
 キャラの外見に関しては適当で、他のキャラと被らなければ良いやという感覚です。でも、キースはキアヌ・リーブスのコンスタンティンに似てると、後になって思いました(笑)


Strange Menシリーズ3作品はよく知られた外国の寓話や神話が元になってるけど、何が君を惹きつけたのか教えてくれる?
 TCMはマザーグースの曲がった男の歌を読んで、何となく不気味で悲しい話だと印象に残ったことが、着想になりました。作中でデヴィッドが、幼い頃にその歌を聴いて悲しい歌だと思ったと語るシーンがありますが、あれは作者が抱いた歌に対する印象でもありますね。
 そしてサンドマンについては、何故惹きつけられたのかについては私もよく分かりません。ただ、その妖精の存在は元々知っていて、世界中の人々を眠らせるのってすごい重労働じゃないか?サンドマンはいつ寝てるの?とふと考えたのがあのストーリーの着想ですね。
 そしてTBMなんですが、実は私はブギーマンについて詳しく知りません。色々と調べたのですが、結局ブギーマン自体に特別な物語がある訳ではなく、なぜ生まれたのかも謎で、外見・名前さえ正確には決まっていないそうなんです。恐怖・不安を具現化した存在だとしか分かりませんでした。つまり、ブギーマンは人々にとっては意味が分からない、「理解できない」存在なんです。
 人間って「理解できない」からこそ、その対象に対して恐怖心を抱くじゃないですか。ランスも、キースが何を考えてるか分からないから怖いと言っていたでしょう?今作はその考えを中心に物語を作りたかったんです。今までの作品と違い、理解できない、怪物のような人間を表現したかったというのが、この作品を作り始めた動機ですね。主人公のキースは感情を抑圧するあまり、ブギーマンのような怪物になりかけてしまってる訳です。
 ちなみに、私は意図して寓話をモチーフにしてる訳ではないんですよ。ブギーマンは寓話のキャラクターではないですし、シリーズ次回作以降は寓話をモチーフとしたものではなくなります。


Paranoiacは最近、映画化されたね。インディーゲームがメディアミックスされるってのは非常にレアなケースだけど、どうしてそうなったの?
 私も驚いたのですが、ある日突然映画企画会社の方からメールを頂いたんです。メールを下さった担当の方は、ご兄弟がインディーのホラーゲームを製作されていて、私の作品に興味を下さったとのことでした。その映画企画会社は、私と私の兄がよく見ている、「本当にあった呪いのビデオ」シリーズの製作元さんだったので、そちらでPranoiacを映像化していただけるならと、喜んで映画化の許可を出させていただきました。企画書や脚本を見せていただいたり、撮影現場にお招きも頂いたのですが、多忙でなかなか参加できなくて…。
 結局、今もまだ映画を観れていない状態です(笑) 早く観てみたいですね!


お気に入りの作品は?
 完成させてしまえば、どの作品にも愛着が沸きます。でもThe Strange Manシリーズは気に入っていますし、必ず結末まで作り上げたいと思っていますね。ただ、一つの作品として気に入っているものを挙げるとするなら、やはり人魚沼でしょうか。


リリースを中止した作品はある?もしあるなら、どうしてか教えてくれる?
 今のところありませんが、キャンセルしようと思っていたものをやはり公開しようと決めた作品ならあります。それはPedestalですね。実はあれは、Paranoiacの続編にするつもりだったんです。ストーリーを練っていくうちに面白いホラーには出来なさそうだと感じ、リリースを一旦取りやめたのですが、サスペンスとして公開するならまだいけるかも知れないと考えて再利用したんです。
 基本的に現在構想を練っている作品たちに関しては、全て公開したいと考えています。ただ、いつまでもゲーム製作ができる訳ではないので、どこまで完成させられるかは難しいところですね。


人魚沼は特に君の作品で面白いものだと思う。表面上は八百比丘尼のような民間伝承の体をとっているけど、ハムレットやラファエル前派の絵画の影響によって描かれているし、 独特と言っていいくらい予想外な物語に仕上がってる。
どうしてこの物語が出来上がったのか教えてくれる?
 ちょっと長くなりますが、説明しますね。この作品は、矛盾する要素を混ぜ合わせることで、プレイヤーに違和感を抱かせるような作りにしています。
 Nurvussさんの言うとおり、このゲームの中に出てくる人魚伝説は日本の民間伝承ですが、それを取り囲む周囲の環境は洋館、西洋絵画など、本来日本にはそぐわないものです。まずここで「日本」「西洋」という相対する要素があります。それから、海に住むはずの人魚が山まで連れ攫われたという伝説の内容からも、「山」「海」という正反対の要素を見てとれます。さらには、美しい女が殺され、醜い姿になっても朽ちることを許されないという「美」と「醜」の要素です。
 この物語には、わざとそういった、本来なら一つにはならないはずの相対した要素を混在させてるんです。分かりやすく例を挙げるなら、主人公の凛がその筆頭でしょう。彼女は外見はとても美しいのに、暴力的です。つまり、「男」のような「女」なんですね。
 黒幕の老人は、人魚のことを「醜く、美しい」と言い、彼女らを嫌悪しながらも愛していると言っています。彼は、妻と子どもたちを人魚の呪いで死なせてしまったことを悔いていたし、人魚を恨んでもいたんでしょう。人魚を解放しなければならないけれど、彼女らに執着している自分ではできないから、無関係の主人公たちを巻き込んだという訳です。老人が抱いた人魚たちへの「愛」「憎しみ」という矛盾した感情が、この物語のそもそもの発端なんですね。
 たまに人魚沼をプレイした感想を見かけるのですが、黒幕の老人に対して嫌悪感を抱く方と、共感を覚える方がいるんですよ。ゲーム自体に対しても、気持ち悪い話だと言う方、美しい話だと言う方に分かれているようです。もしくは、両方の感想を持っていて1つには絞れないという方ですね。 私が狙ったのはまさにそこでした。皆さんそれぞれに、色んな感想を持ってほしいと思ったんです。ただ綺麗で美しい話を作るのは簡単でしょう。気持ち悪いだけの話を作るのだって同じです。それじゃつまらないじゃないですか。理性と感情がギリギリの均衡を保っているような作品を作ってみたかったし、プレイした方に色々な味わい方をしてほしいと思ったからこそ、人魚沼はあんな作りになったんですね。


TBMが完成したけど、次回作は何?
 予告動画にあるPedestal、あれを次に公開したいのは山々なんですが、グラフィックを全て自作にするつもりなので時間がかかっています。今までと違ってサスペンスゲームですしね。だから、次に公開するのはシリーズの続編になると思います。
 せっかくこうしてインタビューの機会を頂いたので、続編について少し書きましょう。タイトルはThe Hanged Man、主人公はもちろん初登場のキャラです。TCM, TSM, TBMと同様、今までの作品と時系列に沿った繋がりがあります。ただ、そういった意味での続編としてはこれが最後の作品になるでしょう。


何か言いたいことはある?
 では、せっかくなのでNurvussさんへ一言…。
 声優のオーディションで私はそれぞれのキャラに合う声優さんを選出するのにものすごく悩んだのですが、実はLanceに関してはNurvussさんに即決でした。それほど、あなたは私の中のLanceに合った話し方、演技をされていました。自分でも、ビックリしたくらいです。
 何度も撮り直しをお願いする方がいる中で、Nurvussさんのファイルの音質もいつも綺麗で、演技もお上手でしたから、本当にいつも助けられていました。安定して良い演技をして下さる方というのは、実に貴重なんです。
 あなたに出会えたことは、TBM製作で味わった幸せのうちの一つです。こうしてインタビューに答えるのも、すごく楽しいです!何度も伝えましたが、改めてTBMに声優として参加して下さってありがとうございました!
 あなたの今後のご活躍をこれからもお祈りしています。相棒のボルシチにもよろしく伝えて下さいね!

inserted by FC2 system